チョコレート品質を左右する強力な分析ツール:レーザー回折式粒子径分布測定装置
2020-07-02Application Briefs
チョコレートと粒子径の関係
チョコレートは、古代メソアメリカ文明において誕生し、スペイン人によってヨーロッパに伝わって以来、世界中で愛され続けてきました。現在ではその製造工程や品質に対する要求は非常に高く、なかでも粒子径分布は、食感(口溶け)・風味・製造効率などに大きな影響を与える重要な要素です。レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置は、製造中間体から最終製品までの粒子径管理を迅速かつ高精度に行えるため、コスト削減と品質向上の両立に貢献します。
チョコレートの種類と主な原材料
カカオマスは、カカオバターや砂糖、粉乳などと混合され、ダーク・ミルク・ホワイトチョコレートといった製品に加工されます(表1参照)。
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ダークチョコレート:カカオ成分が高く、ミルク成分は少ない
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ミルクチョコレート:粉乳を含み、よりマイルドな味わい
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ホワイトチョコレート:カカオ成分は含まず、カカオバターのみを使用
※ホワイトチョコレートは、厳密にはカカオ成分を含まないため、「チョコレート」とは別に分類されることがあります。
表1. 各種チョコレートの主な原材料構成
チョコレートの粒子径分布比較(同一ブランド)
図1は、あるブランドのミルク、ダーク、ホワイトチョコレートにおける粒子径分布(PSD)をBettersizer 2600で測定した結果を示しています。平均粒子径は、ミルク > ダーク > ホワイトの順となり、粒子分布の「粗い側」の違いは、カカオ成分や粉乳含有量の違いを反映しています。ホワイトチョコレートは微粒子(約5μm)を多く含み、一方でミルクチョコレートは粗粒子の割合が大きいのが特徴です。また、複数成分が含まれるため、どのチョコレートにもバイモーダル分布(2つのピーク)が見られます。
図1. 同一ブランドにおける3種チョコレートの粒子径分布比較
各国産ミルクチョコレートの粒子径比較
同じ「ミルクチョコレート」であっても、国や地域によってレシピや製造工程は異なります。現地の消費者の嗜好(口当たり、甘さ、融点など)に応じて、粒子径も変化することが想定されます。Bettersizer 2600を使用して、中国・スイス・アメリカ・イギリス・ベルギーの5カ国で製造されたミルクチョコレートの粒子径分布を比較した結果が、図2および表2に示されています。
図2. 各国産ミルクチョコレートの粒子径分布の比較
表2. 各国産ミルクチョコレートのD10, D50, D90値
ベルギーやイギリス産のチョコレートは、より細かい粒子径分布を持っており、長時間の粉砕・コンチングが行われていることが示唆されます。これにより、より滑らかな口溶けや風味が得られると考えられます。
まとめ
Bettersizer 2600は、さまざまな種類や産地のチョコレートの粒子径分布を高い再現性と精度で測定することが可能です。これにより:
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狙った食感・風味の実現
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地域市場に合わせた製品設計
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製造工程の効率化と品質の均一化
が実現し、チョコレート製造の差別化と高付加価値化に大きく貢献します。