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リチウムイオン電池のエネルギー密度向上を実現する、正極材料のタップ密度評価

2021-11-08Application Note

タップ密度は、リチウムイオン電池(LIB)に使用される正極材料にとって極めて重要な物性パラメータの一つであり、電池の体積エネルギー密度に直接影響を及ぼします。もう一つの重要な指標である粒度分布と併せて最適化することで、高性能な電池製造を支える材料開発が可能となります。 本アプリケーションノートでは、異なる粉砕条件で処理されたLiFePO₄(LFP)正極材料におけるタップ密度および粒度分布の関係を、BeDensi T ProシリーズおよびBettersizer STを用いて評価しました。

 

使用装置:

業界:電池材料

サンプル:LiFePO₄(LFP)

測定内容:粉体物性(タップ密度)、粒子径分布

 

セクション


 

1.はじめに

 

リチウムイオン電池(LIB)は、パソコン、通信機器、家電製品などの「3C製品(Computer, Communication, Consumer)」に広く使用されており、これらは一般的に「情報家電」とも呼ばれています。3C製品はコンパクトであることから、体積の制約を受ける用途が多く、LIBには小型で高性能な設計が求められます。図1aに示されるように、LIBは3C製品だけでなく、電気自動車や定置型蓄電システムにも活用されており、その用途は多岐にわたります。また図1bが示す通り、LIBは実用的な充電式電池の中で最も高いエネルギー密度を誇ります。

 

Figure-1-Applications-of-Li-ion-battery-a-and-energy-density-of-rechargeable-batteries-b

図 1.リチウムイオン電池の用途(a)と二次電池のエネルギー密度(b)

 

このような体積制限のある用途では、電池の「体積エネルギー密度(Wh/L)」が重要な評価指標となります。これは単位体積あたりに蓄えられるエネルギー量を表す指標であり、同じ体積でより多くのエネルギーを蓄えられるバッテリーが求められるのです。

そのため、製品内部スペースが限られている場合でも、エネルギー密度の高いLIBであれば、小型化と高性能化の両立が可能となります。現在もLIBのエネルギー密度向上に関する研究は活発に行われていますが、市場の需要を完全に満たすにはまだ至っていないのが現状です。[1]

 

LIBの体積エネルギー密度を高めるためには、正極活物質に高いタップ密度(詰まりやすさ・充填性)が求められます。下記の表1では、一般的な正極材料における理論密度タップ密度の違いが示されています。タップ密度は、粒子径や粒度分布、形状などによって大きく左右され、製造工程の最適化(前駆体の調整、焼成条件、粉砕工程など)によって改善が可能です。[2]

 

表1、正極材料の理論密度とタップ密度(g/cm³)

材料

Li (NixCoyMnz)O2

LiFePO4

LiMn2O4

LiCoO2

理論密度 (g/cm3)

4.85

3.60

4.31

5.10

タップ密度 (g/cm3)

2.6-2.8

0.80-1.10

2.20-2.40

2.80-3.00

 

 

また、粉砕時間は正極材料の粒度分布(PSD)に直接影響を与えるため、最適なタップ密度を得るためには粉砕条件の調整も重要です。PSDの違いによって材料の充填性が変化し、ひいてはLIBのエネルギー密度や性能にまで影響を及ぼします。

 

2.実験方法

 

異なる粉砕時間で調製された2種類のLiFePO₄(LFP)サンプルについて、タップ密度と粒子径分布を評価しました。タップ密度の測定には、2連ステーションを搭載したBeDensi T2を使用し、ASTM B527-20規格に準拠して試験を行いました。測定では50gの試料を円筒容器に投入し、タップ高さ3mm、タップ速度200回/分、タップ時間は8分間としました。粒子径分布(PSD)の測定には、レーザー回折式粒度分布測定装置 Bettersizer STを使用し、1分以内で迅速に解析を行いました。

 

3.結果と考察

 

3.1 タップ密度

 

図2aに示す通り、LFP-1のタップ後体積は55.5mL、LFP-2は46.0mLでした。そこから算出されたタップ密度は、それぞれ0.89 g/cm³(LFP-1)、1.08 g/cm³(LFP-2)となっています。10回の繰り返し測定を行った結果(図2b)でも、再現性が非常に高いことが確認されました。この高い精度と再現性は、以下の3点に起因します:

 

  • ASTM B527-20に準拠した標準的な測定手順

  • タッピング中の質量偏りを抑える回転機構

  • 目盛付きメスシリンダーを3方向から読み取り、平均値を算出する(図3)

Figure-2-a-sample-volume-changes-during-tapping-b-10-repeat-sample-measurements-of-tapped-density

 

図2 (a)タッピング中の試料の体積変化 (b)タッピング密度の10回繰り返し測定

 

Figure-3-The-BeDensi-T2-Pro-with-the-easy-to-read-graduated-cylinders

 

3.BeDensi T2 Proと読みやすいメスシリンダー

 

3.2 粒子径分布 (PSD)

 

タップ密度測定後、2種類のLFP試料の粒子径分布を比較したところ、どちらも0.28~38.41μmの範囲内で類似した分布帯を示しました。しかし、中央値D50に注目すると、LFP-1は4.08μm、LFP-2は9.21μmとなっており、粒子がより微細なLFP-1の方が、タップ密度が低い結果となりました(図4参照)。

 

Figure-4-The-PSD-of-two-samples図4.0.28~38.41μmの範囲にある2種類のLFP試料のPSD

 

表2.正極材の理論密度とタップ密度

Sample

Dmin (μm)

D10 (μm)

D50 (μm)

D90 (μm)

Dmax (μm)

LFP-1

0.28

1.10

4.08

12.21

38.41

LFP-2

0.28

1.46

9.21

18.07

38.41

 

この結果は、粒子径が小さいほどタップ密度が低下するという報告とも一致しています[4]。つまり、粉砕時間を延ばして粒子径を小さくすればするほど、同じ質量でもより多くの体積を占めるようになり、結果としてタップ密度が低くなります。

 

結論

 

本試験の結果、粒子径分布の調整によってタップ密度を最適化できることが明らかとなりました。正極材料にとってタップ密度は重要な物性であり、これを向上させることで、同一体積においてより多くのエネルギーを蓄えられる高性能リチウムイオン電池の実現が可能となります。そのため、LIBの製造・開発に携わる現場では、再現性が高く使いやすいタップ密度試験機を活用することが強く推奨されます。BeDensi T Pro シリーズは、研究開発から生産管理まで幅広く対応可能な、LIB材料評価に最適なツールです。

 

参考文献

 

[1] El Kharbachi, A., et al. Exploits, advances and challenges benefiting beyond Li-ion battery technologies. J. Alloys Compd., 817 (2020) 

[2] Yang, S., et al. High Tap Density Spherical Li[Ni0.5Mn0.3Co0.2] O2 Cathode Material Synthesized via Continuous Hydroxide Coprecipitation Method for Advanced Lithium-Ion Batteries. Int. J. Electrochem., 9 (2012). 

[3] ASTEM B527-20 Standard: Test Method for Tap Density of Metal Powders and Compounds. 

[4] Ying J, et al. Preparation and characterization of highdensity spherical LiNi0.8Co0.2O2 cathode material for lithium secondary batteries. J. Power Sources, 99 (2001)

 

著者について  

Bettersize-engineer-Perfil-Liu Perfil Liu

アプリケーションエンジニア @ Bettersize Instruments

 

 

 

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