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レーザー回折式粒子径分布測定装置によるリチウムイオン電池用正極材の粒子径評価

2021-03-23Application Note

高いエネルギー密度、安定性、安全性を兼ね備えたリチウムイオン電池を実現するためには、正極材の粒子径分布を厳密に管理することが不可欠です。本アプリケーションノートでは、Bettersizer 2600 を用いて、リチウム電池用正極材料の粒子径分布を迅速かつ簡便に測定する方法についてご紹介します。

 

使用製品 Bettersizer 2600
産業分野 電池・エネルギー分野
サンプル リチウム電池用正極材
測定項目 粒子径分布
測定技術 レーザー回折法

 


 

はじめに

 

近年、電気自動車やスマートウェアラブル端末の普及に伴い、新エネルギー分野の発展が加速しています。これにより、リチウムイオン電池用正極材料の研究開発および生産が世界的に注目を集めています。中でも「高容量」「長寿命」「高い安全性」「低コスト」を兼ね備えた正極材料の開発は、電池業界における主流課題のひとつとなっており、各メーカーがしのぎを削る分野です。2021年1月の時点では、電気自動車向けのリチウムイオン電池の生産はフル稼働状態にあり、年末の需要増に伴って正極材を含む高性能原材料の供給がひっ迫する事態となっていました。

 

リチウムイオン電池の代表的な正極材には、以下のような材料が挙げられます:

  • リン酸鉄リチウム(LiFePO₄)

  • 酸化コバルトリチウム(LiCoO₂)

  • 炭酸リチウム(Li₂CO₃)

  • 高ニッケル系三元材料(NCA、NCM など)

これらの材料においては、粒子径やその分布が充放電性能や電池の安定性に大きな影響を与えます。そのため、製品開発や製造段階において粒子径分布を正確に評価・管理することが非常に重要です。

 

特に、リン酸鉄リチウム(LiFePO₄)は、リチウムイオン電池の正極材として広く使用されている材料のひとつです。本材料においては、粒子径分布がその加工性や電池特性に直結するため、適切な測定が求められます。本測定事例では、Bettersizer 2600 レーザー回折式粒子径分布測定装置を用いて、5種類のリン酸鉄リチウム試料の粒子径分布を評価しました。

Bettersizer 2600 laser particle size analyzer

Bettersizer 2600 レーザー回折式粒子径分布測定装置

 

リン酸鉄リチウム粒子の粒子径分布

 

Figure-1-Particle-size-distribution-of-lithium-iron-phosphate-particles

図1. リン酸鉄リチウム粒子の粒子径分布

 

リン酸鉄リチウム粒子の代表粒子径

 

表1. リン酸鉄リチウムの代表粒子径

Sample

D10 (μm)

D50 (μm)

D90 (μm)

B

0.370

0.991

2.790

D

0.973

4.228

11.150

A

0.388

1.057

3.126

C

0.387

0.956

2.970

E

0.985

10.190

18.330

 

図1に示されているように、リン酸鉄リチウム試料A、B、Cの平均粒子径は、試料DおよびEよりも明らかに小さくなっています。一般に、リン酸鉄リチウムの平均粒子径は、リチウムイオン電池の電気化学的特性に大きな影響を及ぼします。粒子が小さいほど、活物質の比表面積が増加し、リチウムイオンの拡散経路が短縮されるため、電池の電気化学反応性が高まります[1]

 

しかし、粒子径が極端に小さい場合、粒子同士が凝集しやすくなります。これにより電子伝導性および固相拡散係数が低下し、電池内部の抵抗が増加します。高い内部抵抗により一部の電流が熱エネルギーに変換され、発熱損失が大きくなり、電池の容量や放電性能に悪影響を与えることになります。

 

ある著名なリン酸鉄リチウムメーカーのフィードバックによると、一般的な製品のD50は1~2.5μmの範囲に収まるのが最も好ましいとされています。この範囲では、放電性能が最も安定し、リチウムイオン電池の性能を最大限に引き出せるためです。一方、試料DおよびEのように、D50が3.5~8μmと大きめの粒子は、内部抵抗が高く、電気化学特性が劣る傾向があるため、電池の寿命、容量、充放電速度、安全性などが低下する可能性があります。

 

表1からも分かるように、試料A、B、Cの平均粒子径は約1μmであるのに対し、DおよびEは4〜10μmの範囲にあります。特に試料Eに見られるような過大粒子は、活物質中でのリチウムイオンの固相拡散係数を低下させ、結果として内部抵抗が上昇し、実効的な充電性能が損なわれる恐れがあります。

 

同一試料の繰り返し測定による再現性評価

 

 図2. 試料Aの繰り返し測定結果(再現性テスト)

 

図2より、Bettersizer 2600を用いたリン酸鉄リチウムの粒子径測定において、優れた再現性が得られていることが確認できます。D10、D50、D90の再現性はそれぞれ0.13%、0.07%、0.09%であり、いずれもISO 13320[2]で規定された基準値を大幅に下回っています。このことから、Bettersizer 2600は、リン酸鉄リチウムの粒子径分布測定において高い信頼性を提供する装置であるといえます。

 

結論

 

リチウムイオン電池用正極材料における粒子径分布は、電池性能を左右する重要な因子です。特定の負極材料およびセル構造に合わせて正極材料の粒子径分布を最適化することで、電池のエネルギー密度および出力性能を効果的に向上させることが可能となります。

高エネルギー密度、高安定性、高安全性を実現するためには、正極材の粒子径分布を正確に管理・評価することが不可欠です。Bettersizer 2600 レーザー回折式粒子径分布測定装置を使用することで、電極材料の粒度を迅速かつ正確に把握することが可能です。

 

参考文献

[1] Battery materials for ultrafast charging and discharging, B Kang, G Ceder, Nature, 12 March 2009, vol 458.

[2] ISO 13320 (2009) Particle size analysis – Laser diffraction methods.

 

著者について

 

Bettersize-application-engineer  

Fangfang Zhang


Bettersize Instruments アプリケーションエンジニア

 

 

 

 

高性能リチウムイオン電池の秘密を解き明かす

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Bettersize Battery Application notes

 

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