酸化チタン粒子径測定における超音波分散の重要性
2020-07-16Application Briefs
■ 優れた白色顔料「酸化チタン」と粒子凝集の課題
酸化チタン(TiO₂)は、その高い隠ぺい力、白色度、明度から、最も優れた白色無機顔料の一つとされています。化学的安定性にも優れ、塗料、プラスチック、紙、インキ、化学繊維、ゴム、化粧品など、幅広い分野で利用されています。
しかし、酸化チタンは酸素原子の高い表面エネルギーにより粒子間の相互作用が強くなり、凝集(アグロメレーション)を起こしやすいという性質があります。この凝集によって、「本来の一次粒子サイズ」を正確に評価することが難しくなり、レーザー回折やSEM(走査型電子顕微鏡)による粒子径測定に大きな影響を与えることがあります。このような凝集を解消し、正確な粒子径分布を得るための手段として「超音波分散」が重要な役割を果たします。
本稿では、その効果について具体的にご紹介します。
■SEMで観察される酸化チタンの凝集状態
以下の図1と図2は、酸化チタンのSEM(走査型電子顕微鏡)画像です。
図1. 酸化チタン粉末のSEM画像
図1. 酸化チタン粉末のSEM拡大画像
図1では、酸化チタンの一次粒子はおおよそ20~30nmの範囲で均一に分布していることが分かります。一方、図2では視野を広げることで、これらの一次粒子が凝集して複雑な集合体を形成している様子が確認できます。このように、SEMでは粒子の形状や結晶構造を詳細に観察できますが、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置 Bettersizer 2600では、実際の分散状態に基づく粒子群全体の統計的なサイズ分布を把握することが可能です。
超音波分散による凝集解消と粒子径の変化
酸化チタンは凝集しやすいものの、適切な超音波処理を施すことで、劇的に分散状態を改善できます。
図3. 超音波なしで測定したSample Aの粒子径分布(Bettersizer 2600使用)
図4. 超音波ありで測定したSample Aの粒子径分布(Bettersizer 2600使用)
図5. 超音波前後比較結果
試料A(酸化チタン粉末)における超音波分散の効果を図3と図4に示します。超音波処理前の平均粒径は約600nmでしたが、処理後は約300nmにまで減少し、小粒子成分の比率が顕著に増加しています。これは、超音波により凝集が解消され、本来の粒子サイズが反映された結果です。
まとめ
酸化チタンは凝集性が非常に高いため、そのまま測定すると粒子径が過大評価されるリスクがあります。SEMやレーザー粒子径解析において正確なデータを取得するためには、測定前の分散処理が不可欠です。
Bettersizer 2600に搭載された超音波分散システムは、凝集粒子を効果的に解砕し、安定した分散液を形成することで、粒子径の真の姿を明らかにします。酸化チタンのような凝集性の高い材料における粒子径分布の評価には、超音波分散とレーザー回折法の組み合わせが最も有効な手法の一つと言えるでしょう。