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Bettersizer S3 Plusによる高機能セラミックス製品の品質管理

2022-12-13Application Note

耐熱性や耐摩耗性、耐腐食性に優れた高機能セラミックスは、医療・航空宇宙・精密工具・電子機器・環境分野などで需要が増加しています。これらの製品の性能を最大限に引き出すためには、原料粉体の粒度分布を最適化し、微細構造を制御することが重要です。 Bettersizer S3 PlusとBT-A60オートサンプラーは、多数のサンプルを自動かつ効率的に測定できるソリューションを提供し、粉体メーカーやセラミックス製造業者の品質管理を強力にサポートします。レーザー回折と動的画像解析を組み合わせた高性能測定により、製造工程のあらゆる段階で信頼性の高い品質管理が可能です。

 

製品 Bettersizer S3 Plus
産業分野 セラミック
サンプル アルミナ粉末
測定タイプ 粒子径粒子形状
測定技術 レーザー回折,動的画像解析

 

目次

 


 

はじめに

 

医療、航空宇宙、精密工具、電子機器、環境分野など、多岐にわたる用途で使用されるセラミックス材料の世界的な需要は増加しています。 高機能セラミックスは、従来のセラミックスが持つ優れた耐熱性・耐摩耗性・耐腐食性に加え、靭性を向上させています。 機械的特性を高める主要な方法の一つは、高純度かつ超微細な無機非金属粉体を原料として用い、製品の微細構造を最適化することです[1]。 セラミックス粉体の粒度分布(PSD)は、成形体の密度や強度、収縮率に大きく影響し、最終製品の性能を左右します。 したがって、粉体メーカー、製品メーカーのいずれにおいても、粒度分布の正確な管理は品質管理に不可欠です。

 

セラミックス粉体の品質管理における課題とニーズ 

     
  • セラミックス粉体の製造過程では、品質の安定を確保し、測定データをトレーサビリティのために記録する目的で、ラインから定期的にサンプリングして測定を行う必要があります。しかし、多数のサンプルを測定するため、粒度測定は時間がかかり繰り返しの多い作業となり、品質管理コストを押し上げる要因となっています。
       
    • 粒度分布を調整するために、細かい粉と粗い粉を一定割合で混合し、成形体の密度を向上させる方法が一般的です。混合粉体の均一性は焼結の成功に直結するため、その均一性をモニタリングできる手法が求められています。



  • 超微細セラミックス粉体の粒径は一般的にサブミクロンオーダーであり、従来のふるい分けなどの測定法は適用できません。レーザー回折法(LD)でも、分析機器の性能面で課題があります。
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  • さらに、セラミックス粉体の焼成・乾燥過程では微細粒子の凝集が起こりやすく、少量の過大粒子は製品の欠陥となり不良率を上げる原因となります。これらの過大粒子を使用前に検出することは品質管理上非常に重要ですが、LD法は過大粒子の画像を表示できず、実際に存在しているか確認しづらいという問題があります。
  •  

Bettersizer S3 Plusはレーザー回折法と動的画像解析を一台に融合させた装置です。レーザー回折システムはサブミクロンレベルの粒子測定においても高精度・高感度・高分解能を実現します。動的画像システムは粉体の分散状態を可視化し、過大粒子の画像取得と形状情報の提供を可能にすることで、粉体の状態をより詳細に分析する手助けをします。

 

Figure-1-The-Bettersizer-S3-Plus,-and-BT-A60-autosampler

 

図1. Bettersizer S3 Plus と BT-A60 オートサンプラー

 

ケーススタディ1:アルミナ粉体サンプルの粒度分布(PSD)を自動測定

 

本ケースでは、粒度分布の異なる5種類のアルミナ粉体(A~E)を用い、各粉体を12サンプルずつ、合計60サンプルをBettersizer S3 Plus と BT-A60オートサンプラーで一括自動測定しました。BT-A60は高処理能力のオートサンプラーで、Bettersizer S3 Plus と連携し完全自動のサンプル解析を実現します。測定前に、60本のサンプルチューブにそれぞれ、メタリン酸ナトリウムを含む水溶液で超音波分散処理を施しました。各チューブにはあらかじめ編集・保存されたSOPに対応するバーコードを貼付しています。

測定開始後の流れは以下の通りです:

  • BT-A60がバーコードを読み取り、サンプルとSOPを特定
  • サンプルチューブ内の懸濁液を吸引し、分散槽へ注入して測定を実施

  • 超音波洗浄し、次の測定へ移行 

 

 

図2. 60サンプルのD10、D50、D90(単位:μm)

 

図2は60サンプルのD10、D50、D90を示しています。サンプルの均一性を保つため、サンプリング針で懸濁液の吸引・注入を数回自動で行いました。各アルミナ粉体12サンプルの再現性は良好で、測定結果はソフトウェアに自動保存されます。

 

Figure 3. The PSD and cumulative curves of sample A, B, C, D and E

 

図3. アルミナA、B、C、D、EのPSDおよび累積曲線

 

図3は5種類のアルミナ粉体の粒度分布と累積曲線を示します。A、B、Cは比較的狭い単峰性分布、Dは広い二峰性分布を示し、PSD曲線の形状の違いは原料調整や処理方法の違いを反映しています。

Table 1. The PSD of sample E

表1. アルミナEのPSD

 

粗粒子の含有量は、製品の欠陥原因となるため重要な指標です。適切な粉砕や篩い分けにより多くの粗粒子は除去されますが、アルミナEは未粉砕・未篩分けの原料です。表1の累積含有率によると、45μm以上の粒子が全体の約9%含まれています。Bettersizer S3 Plus と BT-A60オートサンプラーの組み合わせにより、大量サンプルの粒度測定が効率的かつ自動で実施可能となります。

 

ケーススタディ2:アルミナ粉体の均一性評価

 

粉体の均一性が悪いと、製品の微細構造にばらつきが生じ、機械的強度の低下につながります。理想的な混合均一性を得るため様々な技術や混合装置が開発されていますが、その効果を簡便にモニターする方法も品質管理上重要です。

 

今回は、細かいアルミナ粉(D50約0.5μm)と粗いアルミナ粉(D50約3.0μm)を混合した2種類の粉体を測定しました。一つは乾式混合(水なし)、もう一つは湿式混合(水あり)です。測定前にそれぞれ異なる5箇所から5回ずつサンプリングし、計10サンプルをBettersizer S3 Plus と BT-803湿式分散ユニットで測定しました。

 

Figure 4. The D50 (um) of the mixed alumina powders

 図4. 混合アルミナ粉体のD50(μm)

 

図4は各サンプルのD50を示します。乾式混合サンプルは大きくばらつきがあり、細・粗粒子の比率が不均一であることを示しています。湿式混合サンプルはD50のばらつきが小さく、均一性が良好です。

 

Figure 5. The PDS curves of the dry mixed alumina powder  and wet mixed alumina powder

 

図5. 乾式・湿式混合アルミナ粉体のPSD曲線

 

図5のPSD曲線からも、乾式混合は再現性が非常に悪く、サンプル3は粗粒子が多く、サンプル4は細粒子のみという偏りが見られます。一方、湿式混合は良好な再現性を示しています。このことから、微細セラミックス粉体の混合には湿式が適していることが示唆されます。

 

ケーススタディ3:アルミナの凝集塊検出

 

細かいセラミックス粉体に予期せぬ過大粒子が混入することは、品質低下や製造・処理条件の変動を示します。PSD曲線上に不意に現れる過大粒子の存在を確認することは重要です。Bettersizer S3 Plus の動的画像解析システムを用いて、超微細アルミナ粉体中の凝集塊を検出し、画像と形状情報を提供しました。

 

 

図6. 2バッチのアルミナ粉体のPSD曲線

 

 図6は同一型番の2バッチのPSD曲線です。基準バッチと比較して、異常バッチに6~20μmの過大粒子が確認されました。これは生産過程での微細粒子の凝集による可能性があります。凝集塊の存在を確実にするため、測定パラメーターは6~20μmの粒子を捕捉するよう設定しました。

 

 

図7. 過大粒子の画像

 

図7は高速CCDカメラで撮影した過大粒子の画像です。画像解析により粒径を数値化(画像上部に表示)し、過大粒子の存在を確認しました。

Figure 8. The scatter plot of particles in the range of 6~20 um.

図8. 6~20μm粒子の散布図

 

6〜20μmの範囲にある粒子は、図8の散布図でカウントされました。画像と縦横比の散布図を組み合わせて解析した結果、異常なPSD曲線は不規則なアルミナ凝集塊の存在によるものであると判断できます。この凝集塊の発生は、製造工程における何らかの不安定要因を示唆しており、原因の確認と改善が必要です。

 

まとめ

 

Bettersizer S3 Plus と BT-A60 オートサンプラーは、セラミック粉体の製造・加工に携わる皆様に、多数サンプルの測定を高い自動化・省力化で実現するソリューションを提供します。高性能なレーザー回折技術と動的画像解析の組み合わせにより、セラミック製造のあらゆる工程における品質管理に信頼性の高い強力なツールとしてご活用いただけます。

 

参考文献

[1] T. A. Otitoju, P. U. Okoye, G. Chen, Y. Li, M. O. Okoye, and S. Li, Advanced Ceramic Components:Materials, Fabrication, and Applications, Journal of Industrial and Engineering Chemistry, 2020, Volume 85, 34-65

 

著者紹介

Bettersize-engineer-Echo-Cao Jing Cao

アプリケーションエンジニア @ Bettersize Instruments

 

 

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