有効成分(API)における粒子径測定の重要性
2020-09-17Application Briefs
医薬品の品質と粒子径の関係
医薬品の品質管理において、粒子径の測定は極めて重要な役割を担っています。特に、溶出速度(dissolution rate)は、薬物の体内吸収に直結するため、製剤開発や品質評価の中心的なパラメータとなっています。たとえば、錠剤などの固形製剤においては、有効成分(API)および賦形剤の粒子径分布、処方設計、圧縮条件などが溶出速度に影響を与えます。粒子が粗すぎると体内への溶解・吸収が遅れ、逆に微細すぎると溶出が速すぎて薬効が短くなる、または副作用リスクが高まる可能性もあります。そのため、APIの粒子径を用途に応じた適切な範囲に制御することが、医薬品の安定した効果と安全性を保証するカギとなります。
図1. 医薬品の特性と溶出速度の関係
用量設計・規制対応における粒子径測定の役割
医薬品の製剤設計において、溶出速度はバイオアベイラビリティ(生物学的利用能)やバイオイクイバレンス(生物学的同等性)の予測にも関与します。これはジェネリック薬から新薬まで、あらゆる開発に不可欠な評価項目です。たとえば、吸入製剤では粒子径が1~7µmの範囲に収まっている必要があり、それより大きければ喉に沈着、小さすぎれば呼吸で再排出される可能性があります。静脈注射製剤においては、不溶性の大きな粒子が含まれていると安全性に深刻な影響を及ぼすこともあります。そのため、世界各国の薬局方では、APIの粒子径評価が必須要件として位置づけられています。
ファモチジン(Famotidine)の粒度分布評価
Famotidine(ファモチジン)は、H2受容体拮抗薬として胃酸の分泌を抑制し、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・逆流性食道炎・Zollinger-Ellison症候群などの治療に広く用いられています。錠剤、カプセル、注射剤など複数の製剤形態が存在します。本研究では、レーザー回折法(Laser Diffraction)を用いて、ファモチジン原薬および賦形剤の粒子径分布を測定しました。Mie散乱理論に基づき、各検出器が受信した散乱光の強度データを解析することで、精密な粒度分布が得られます。このような測定により、製造過程のばらつきや製剤設計の最適化が可能になり、品質の一貫性を確保できます。
図2. ファモチジン単一試料の粒度分布曲線
図3. Bettersizer 2600 によるファモチジン試料の粒子径測定結果
ファモチジンの画像解析
図4. BeVision S1 によるファモチジン-1 の画像解析結果
図5. BeVision S1 によるファモチジン-2 の画像解析結果
画像解析による観察とその意義
画像解析では、粒子の形態や構造を直接観察でき、複雑なアルゴリズムや数理モデルを用いて定量的に評価することが可能です。Bettersizeの装置は、こうした高度な測定技術を誰にでも扱いやすく直感的な操作性で提供しており、ユーザーが専門知識を持たずとも高精度な評価を行えるよう設計されています。実際の顕微鏡観察では、2つのサンプルとも分散状態が良好で、凝集は見られませんでした。粒子はほぼすべてが針状の半透明構造をしており、大きい粒子はおおよそ100〜200 µmの範囲にあり、レーザー回折法による粒度分布の結果とよく一致していることが確認されました。
まとめ
レーザー回折法は、原薬や賦形剤の粒度評価に広く用いられている強力な技術です。高速かつ高精度で測定できる点が大きな特長ですが、一方でいくつかの限界も存在します。たとえば、カプセル剤や錠剤全体における特定成分(API)の粒子径や形状を直接測定することはできず、あくまで試料全体の粒度分布しか把握できません。そのため、レーザー回折法に加えて、画像解析によるクロスバリデーションを行うことが非常に有効です。画像解析により、粒子の最終形状を目で確認でき、サンプルが凝集しているか、破砕されているかといった状態も把握することができます。さらに、多くの製剤においては、APIや賦形剤の結晶形状も非常に重要な要素となります。
このように、レーザー回折法と画像解析技術を組み合わせることで、溶解速度に基づく粒度評価と製剤設計における最適化の両面からアプローチが可能になります。医薬品の品質管理は非常に複雑で難易度が高い分野ですが、Bettersizeはその課題解決において、常に信頼できるソリューションを提供し続けています。製薬分野における粒子評価の強力なパートナーとして、ぜひご活用ください。