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リチウム鉄リン酸塩(LFP)粒子径分布測定および最適化へのアプローチ

2024-03-08Application Note

リチウム鉄リン酸塩(LFP)の粒子径分布(PSD)を正確に測定することは、バッテリー性能を最適化するために欠かせません。本研究では、LFPのPSD測定における課題を取り上げ、超音波分散(ultrasonication)による前処理の効果的な解決策を提案します。

 

テストの結果、最適な前分散条件として、510Wで1分間の超音波処理が確認されました。この方法により、D100 = 10.27 μmの安定したPSDが得られ、ISO 13320規格にも準拠した高い再現性が確認されました。このアプローチは、LFPバッテリーの性能向上を目指す研究者やエンジニアにとって、持続可能なエネルギーソリューション開発の加速に貢献するでしょう。

 

測定対象・装置情報

項目 詳細
製品名 Bettersizer 2600
業界 バッテリー
サンプル リン酸鉄リチウム(LFP)
測定タイプ 粒子径分布(PSD)
測定技術 レーザー回折法

 

目次

  • はじめに

  • 測定設計

  • 結論

 

はじめに

電気自動車(EV)の進展は、より高性能で持続可能なエネルギーソリューションの開発に依存しています。しかし、航続距離の制約が依然として大きな課題です。リチウムイオン電池の中でも、リン酸鉄リチウム(LFP)は安全性とコストメリットに優れていますが、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)やリチウムニッケルコバルトアルミン酸塩(NCA)に比べ、重量エネルギー密度が低いことが課題となり、EVの航続距離や充電速度に影響を与えています。

LFPバッテリーの性能を最大化するためには、粒子径の最適化が鍵となります。粒子径がバッテリー性能に与える影響には、以下の重要な要素があります。

 

粒子径とLFPバッテリー性能の関係

  • 小粒径のLFP正極粒子
    小さい粒子は表面積が大きくなるため、より多くのリチウムイオンが正極粒子と反応できます。その結果、より多くのエネルギーを貯蔵・放出できるようになります。

  • 小粒径のLFP粒子の多孔構造
    多孔性が向上し、電解質の浸透性が改善され、イオン輸送が促進されます。これにより、充放電速度が向上します。

 
 

粒子径最適化の課題と分散技術の重要性

粒子径を小さくすればバッテリー性能が向上するわけではありません。粒子が小さすぎると、充放電サイクル中に機械的な劣化を引き起こし、バッテリー寿命が短くなる恐れがあります。また、粒子間の空隙が増えるとエネルギー密度が低下するため、粒子径の最適化は、エネルギー密度、寿命、コストのバランスを考慮するために不可欠です。


 

測定設計

LFP粒子のPSD制御は、従来のふるい分け法では精度が限られているため、レーザー回折法が有効です。Bettersize InstrumentsのBettersizer 2600は、0.02~2600 μmの範囲でPSD測定が可能で、乾燥粉体や湿式スラリーの測定も柔軟に対応できます。本研究では、BT-802大容量自動分散ユニットを併用し、撹拌速度を1800 rpmに設定して、サンプルの沈降を防止しました。


 

 

測定精度の維持:異常なPSDとOBS傾向

粒子径分布(PSD)の測定結果が信頼できるものであるためには、同じLFPサンプルで異なる撹拌・循環時間を設定し、再現性のあるデータを得ることが重要です。撹拌および循環時間が長くなると、PSDが減少し、粒子濃度(OBS)が増加する傾向が観察されました。この現象は以下の図に示されています。

 

図1:異常な粒子径分布と粒子濃度の傾向

 

通常、撹拌時間を延長すると、粒子径分布(PSD)が安定し、粒子濃度が一定に保たれる傾向があります。しかし、LFPサンプルでは、撹拌時間が長くなるとPSDが減少し、濃度が増加するという逆説的な現象が見られました。これは、粒子径分布の「分化」現象によるものです。

 

  1. 分散:多くの粒子が、撹拌を10分間行っても小さい粒子に分裂し続けます。このことは、撹拌力が凝集体を完全に分解するには不十分であることを示唆しており、その結果、平均粒子サイズが徐々に小さくなることが分かります。

  2. 凝集:一部の粒子が再び凝集し、大きな粒子を形成することで、粒子濃度%が増加します。

 

この現象は、サンプル懸濁液の不安定な状態、いわゆる「不十分分散」を示しており、LFPサンプルに対する従来の撹拌分散法の限界を明らかにしています。

 

図2. 粒子径分布「分化」現象

 

不十分分散を解決するための前処理方法

従来の撹拌法では、LFP粒子を完全に分散させることが難しいことが分かりました。そこで、超音波分散法が効果的な前処理法として導入されました。超音波エネルギーを使用することで、粒子の凝集を解消し、均一な懸濁液を作り出すことが可能です。

 

最適な前分散戦略の確立

この研究では、異なる超音波出力と処理時間の組み合わせをテストし、PSDの安定性を保つために最適な条件を見つけました。最適な前分散条件は、510W、1分間の超音波処理であり、この設定で得られたPSDは非常に安定しており、再現性の高い結果が得られました。

 

表1. 異なる超音波出力と処理時間に応じた粒子径変化

Power (W)

Typical Value (μm)

30 seconds

1 minute

3 minutes

5 minutes

 

270W

D10

0.328

0.327

0.324

0.325

D50

0.817

0.773

0.758

0.762

D90

4.740

2.426

2.323

2.242

 

360W

D10

0.330

0.327

0.326

0.324

D50

0.813

0.757

0.746

0.752

D90

3.039

2.970

2.354

2.344

 

420W 

D10

0.324

0.324

0.324

0.324

D50

0.731

0.728

0.729

0.724

D90

1.830

1.790

1.755

1.753

 

 510W

D10

0.325

0.326

0.324

0.324

D50

0.724

0.722

0.721

0.719

D90

1.726

1.706

1.703

1.705

 

 570W

D10

0.325

0.325

0.325

0.325

D50

0.719

0.715

0.718

0.719

D90

1.693

1.707

1.708

1.704

 

バランスを取る: 最適結果のための510W、1分間処理

効率とパワーのバランスを追求した結果、LFPサンプルの前処理設定として最適なのは、510Wで1分間の超音波処理であることが明確に判明しました。この設定は粒子を効果的に分散させ、安定したPSDを得ることができ、D100値は10.27 μmとなりました。

 

再現性テストによる検証

この前処理法の信頼性を確認するために、6回の繰り返し測定が行われました。図3に示されている結果は、優れた再現性を示しています。D10、D50、D90の標準偏差は非常に低く(それぞれ0.12%、0.05%、0.09%)、ISO 13320の規格に完全に準拠していることが確認されました。

 

図3. 再現性テスト

 

結論

LFP粒子の粒度分布(PSD)の精密な制御は、バッテリー性能において極めて重要な役割を果たします。レーザー回折法による測定、特にBettersizer 2600の活用は、リチウム電池業界において粒子径分布の監視における強力なツールとなります。さらに、LFP材料の分散における課題を解決するために、超音波分散法などの最適化された前処理手順が効果的であることが確認されました。本研究は、LFPバッテリーの性能を最適化するための重要な指針となります。

 

著者について

Bettersize-application-engineer-Weichen-Gan Weichen Gan

Application Engineer @ Bettersize Instruments

 

 

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