粉体塗料の粒子径分布測定におけるレーザー回折法の活用
2020-11-16Application Briefs
はじめに:粉体塗料とは
粉体塗料は、固形樹脂・顔料・充填材・硬化剤・添加剤の5つの成分から構成されています。これらの成分は、冷却された樹脂を粉砕・微粉化する前に、溶融樹脂中に均一に分散される必要があります。溶剤塗料や水性塗料では、溶剤や水が分散媒として使用されますが、粉体塗料では空気が分散媒として用いられる点が特徴です。
粉体塗料の主な利点は以下のとおりです:
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溶剤による汚染がない(環境にやさしい)
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100%の塗膜形成が可能(材料ロスが少ない)
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省エネルギー性が高い
図1に粉体塗料の主成分を示します。

図1. 粉体塗料の主成分構成
粉体塗料の粒子径分布比較:レーザー回折法による測定
本検討では、ポリエチレン系、ポリウレタン系、ナイロン系の3種類の粉体塗料について、サンプルAとサンプルBを比較し、それぞれの粒子径分布の違いを調べました(図2〜図4参照)。その結果、同じ系統の塗料であってもサンプル間で粒子径分布が異なることがわかりました。すべてのBサンプル(赤線)は、Aサンプル(青線)よりも粗大粒子が多く含まれており、スプレー塗装時により厚い塗膜が形成されやすいと考えられます。
また、ポリエチレンおよびナイロン系のAサンプルはBサンプルよりも広い粒度分布を示しており、作業対象物へのスプレー適性が高く、機能性の面でも優れている可能性が示唆されました。

まとめ
粉体塗料の粒子径は塗装性能に直接影響を与える重要な物理特性です。
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粒子径が大きすぎると流動性が低下
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粒子径が小さすぎると、スプレー効率や回収率が悪化
Bettersizer 2600のようなレーザー回折式粒子径測定装置を用いることで、異なる粉体塗料の粒子径分布を簡便かつ高精度に比較することができます。
このデータは、粉体塗料の機械的特性の違いや最適化条件を把握するうえで有用であり、製品設計や品質管理における重要な指標となります。