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月・地球・海洋における土壌および堆積物の粒子径と形状の解析

2022-04-13Application Note

土壌や堆積物の分析は、その起源や成り立ちを知る手がかりとなる重要な手法です。これらの分析は主に、水文学および地質学の分野において活用されています。 ただし、土壌や堆積物は多様な粒径と形状を持つため、精度の高い測定が求められます。Bettersizer S3 Plusは、0.01 µmから3.5 mmまでの広範な測定レンジに対応しており、さまざまな地形由来のサンプルに対しても、粒子径および形状を効率よく評価できます。 本アプリケーションノートでは、月面レゴリス、海洋堆積物、砂漠の土壌の3種のサンプルを取り上げ、それぞれの粒子特性の違いを詳しくご紹介します。

 

使用機種 Bettersizer S3 Plus
関連分野 環境分析
サンプル 月面レゴリス、海洋堆積物、砂漠の土壌、標準砂
測定項目 粒子径、粒子形状
測定技術 レーザー回折法、動的画像解析

 

はじめに

 

地球上の地形や環境によって、土壌は多様な特徴を持ち、その土地の歴史や環境を反映しています。国際土壌科学連合(IUSS)の基準では、土壌は粘土、シルト、細砂、粗粒、砂利に分類され、米国農務省(USDA)の分類では、砂はさらに8つのクラスに細分されています(図1参照)。 [1].

 

Figure 1. Classification of soil in different systems
図1. IUSSおよびUSDAによる土壌分類の比較

 

水文学・地質学分野における重要性

 

水文学の観点

土壌や堆積物の粒子サイズは、河川の流路変化や浸食・堆積の傾向に直接影響を与えます。同じ地点で定期的にサンプリングを行い、粒度の変化を追跡することは、洪水リスク評価や流域保全にとって重要です。特に海洋堆積物では、粒径の幅が大きく、数μmの微粒子から数cmの粗粒まで含まれるため、単一の測定手法では正確な評価が困難です。そのため、ふるい分けとレーザー回折法を組み合わせた二段階測定が有効であり、粗粒はふるいで除去し、微粒子はレーザー回折で評価することにより、より正確な粒度分布が得られます。

 

地質学の観点

土壌の状態は、農業や建設、環境保全と密接に関わっています。また、生態系との関連性も深く、物理・化学・生物学的性質を包括的に分析することで、土壌の本質的な理解が可能になります。なかでも粒子径と粒子形状は、土壌や堆積物の物理的性質を評価する上で最も基本的かつ重要な指標です。

 

Bettersizer S3 Plusは、レーザー回折法と動的画像解析を1台に統合したハイブリッドタイプの粒子分析装置であり、0.01 µmから3.5 mmまでの測定範囲をカバー。粘土から砂利まで、あらゆる粒度分類に対応可能です。本装置は、国内外の多数の大学・研究機関において、環境・地質調査や教育用途としても広く導入されています。本資料では、月面レゴリス、海洋堆積物、砂漠土壌の測定事例を通じて、その有用性をご紹介いたします。

 

測定方法

 

1.月面レゴリス [2]

 

最初の測定対象は、中国の月探査ミッション嫦娥5号(Chang’E-5)によって採取された月面レゴリスです。このサンプルは、中国航天科技集団(CAST)に属する錢学森宇宙技術実験室によって提供されました。月面サンプルの採取は、1976年の旧ソ連によるもの以来であり、2020年にCE-5が1,731gのレゴリスを地球へ持ち帰ったことは大きな成果です(図2参照)。同研究所は、正式にこのサンプルの分析を許可された中国初の研究機関のひとつです。

 

Figure 2. Chang’E-5 on-site image for before and after sampling

 図2.嫦娥5号(Chang’E-5)現地での採取前後の様子

 

Bettersizer S3 Plusは粒子形状解析と粒子径測定を同時に実施しました。図3の単粒子画像によると、サンプルは微細な粒子から粗大粒子まで含まれています。合計120,597粒子の粒径分布は15.0~438.2μmの範囲にあり、平均円形度は0.875でした。円形度が0.805未満の粒子は全体の10%程度に留まっています。このことから、CE-5の採取現場の月面レゴリスは比較的規則的な形状を持つといえます。地球のさまざまな地形が異なる分類に属するように、月の地形にも多様性があります。Bettersizer S3 Plusは、科学者が土壌サンプルを詳細に解析し、月や地球の歴史・進化の理解を深める手助けをします。

 

Single-particle-images

 

circularity-and-particle-size-distribution

図3.単粒子画像、円形度および粒径分布

 

2.海洋堆積物

 

海洋堆積物サンプルは国立海洋環境監視センターより提供され、3種類の粒径分布を持つものをBettersize研究所にて測定しました。図4に示す通り、上から順に粒径が大きくなっています。

 

Figure 4. Marine sediment samples

 図4.海洋堆積物サンプル

 

表1.3サンプルの粒径結果

Sample Name

D10 (μm)

D50 (μm)

D90 (μm)

D97 (μm)

Sample A

60

185

500

700

Sample B

160

292

997

1412

Sample C

224

762

1531

1785

 

表1は3サンプルのBettersizer S3による粒径結果を示しています。全サンプルとも広い分布範囲を持ち、Sample Aは3サンプル中で最も小さい粒径分布ですが、D10からD90まで400μm以上の差があります。Sample Bには非常に粗大な粒子が含まれ、体積基準の粒径分布に大きく影響しています。図5の画像解析では、Sample Aの粒径は比較的一様である一方、Sample Bには大粒子が含まれていることが明確に確認できます。

 

Figure 5. Image analysis of sample A (top) and sample B (bottom)

5.Sample A(上)とSample B(下)の画像解析

 

図6のSample Bのグラフには2つ以上のピークが認められ、異なる粒径群が存在することを示しています。Bettersizer S3シリーズは粒径群の識別に優れており、画像測定が粗粒に対して高精度であることとレーザー回折が微・中粒子に強みを持つことを活かし、両者を組み合わせて測定しました。

 

Figure 6. Particle size distributions of the three samples

 図6.3サンプルの粒径分布

 

3. 砂漠砂と標準砂 [3]

 

ハノーファー地質科学連邦研究所は、砂漠砂が建設用標準砂の代替となりうるか検証する実験を実施しました。測定はレーザー回折法、動的画像解析、両者の組み合わせで行われました。図7より、標準砂サンプルにおいて動的画像解析と組み合わせ分析が類似した粒径分布を示しています。

 

Figure 7. Particle size distributions of desert and standard sand

図7.砂漠砂と標準砂の粒径分布

 

標準砂は粗粒を多く含み、砂漠砂は粗粒が少ない特徴があります。表2より、両者のD10値は約220μmで近似していますが、D90値は標準砂が約1800μmに対し、砂漠砂は約740μmと大きく異なります。

 

表2.粒径分布の代表値

                                                       

Sample

D3

D6

D10

D16

D25

D50

D75

D84

D90

D99

砂漠砂

(動的画像解析)

145.9

185.5

223.1

263.1

316.8

433.6

575.9

656.9

740.8

1544

標準砂

(動的画像解析)

150.9

177.7

216.8

298.6

461.4

958.9

1476

1678

1828

2422

標準砂

(レーザー回折+画像解析)

150.3

177.8

217.4

295

457.5

943.9

1434

1631

1781

2341

 

表3.代表的な粒子形状パラメータ

Table 3. Typical individual particles shape parameters

 

レーザー回折法で示されたサイズの違いに加え、形状にも大きな差異があります。動的画像解析によると、砂漠砂の等価直径は標準砂より小さく、特にL/D比に顕著な差が見られます。図8より、標準砂の平均L/D比は1に近い一方で、砂漠砂はより高い値で変動しています。

 

Figure 8. L/D value distribution of desert sand and standard sand

 図8.砂漠砂と標準砂のL/D比分布

 

砂漠砂は中・大粒子が不足しているため、そのまま建築材料には適しません。しかし適切な割合で中・粗粒を混合すれば、建築用材料としての利用が可能となるでしょう。

 

結論

 

土壌や堆積物の粒径測定における最大の課題は、幅広い粒径分布に対応することです。Bettersizer S3シリーズは動的画像解析とレーザー回折法を搭載し、多様な粒径分布に対応可能な理想的な装置です。信頼性の高い粒径・形状測定結果を提供し、研究・品質管理に貢献します。

 

参考文献

 

[1] Madhan Mohan.M and Prabhu Prasadini. 2019. Manual on Practical soil physics. Regional Agricultural Research Station, Pp 72.

[2] H. Zhang, X. Zhang, G. Zhang, K. Dong, X. Deng, X. Gao, Y. Yang, Y. Xiao, X. Bai, K. Liang, Y. Liu, W. Ma, S. Zhao, C. Zhang, X. Zhang, J. Song, W. Yao, H. Chen, W. Wang, Z. Zou, and M. Yang (2022), Size, shape, and composition of lunar samples returned by Chang’E-5 mission, Sci. China- Phys. Mech. Astron. 65, 000000. 

[3] Suitability of desert or recycling sands as raw material for concrete production. 3P Instrument. https://www.bgr.bund.de/DE/Gemeinsames/Nachrichten/Aktuelles/2019/2019-08-06_wuestensand.html

 

著者について

Bettersize-application-engineer Xiurong Qiu

アプリケーションエンジニア @ Bettersize Instruments

 

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